取り組み事例

正浸透(FO)膜法による省エネルギー海水淡水化技術

2018/11/28/Wed

   
 
松山 秀人(大学院工学研究科・教授)
吉岡 朋久(大学院科学技術イノベーション研究科・教授)
中川 敬三(大学院科学技術イノベーション研究科・准教授)
 

従来法に比べ75%の大幅な省エネ化技術で
水資源確保と地球温暖化抑制を目指す

現在人口増加や経済発展、気候変動などにより、世界各地で水不足が深刻化しており、世界人口の約半分にあたる43億人もの人々が水不足のリスクに直面している。雨の少ない地域に暮らす人々にとって、海水淡水化は日常生活や経済活動に必要不可欠なものとなっている。海水淡水化には現在、逆浸透(RO)膜が広く用いられている。日本製のRO膜は世界のトップシェアを占める。RO膜では圧力をかけて海水から真水をろ過するため、その運転には高圧が必要で、高圧ポンプを動かすために世界合計で日本の消費電力の1割にも達する膨大な電力が海水淡水化に使用されている。

海水淡水化をより省エネルギーで行う方法として注目されているのが正浸透(Forward Osmosis; FO)膜法である。FO膜法では、自発的水透過を利用するため、海水淡水化における消費電力を大幅に減らすことが可能となる。FO膜法で必要となるのは、高圧の代わりに海水から水を引き抜く駆動溶液(Draw Solution; DS)と呼ばれる高浸透圧物質である。即ち、FO膜法の実現には、高浸透圧を有しかつ低エネルギーで容易に再生し繰り返し使用が可能なDS物質の創出と、正浸透駆動に特化した高性能FO膜の開発が不可欠である。我々が研究するFO膜法が実用化されれば、海水淡水化に必要なエネルギーは現行のRO膜法の約1/4で済み、大幅な省エネルギー化が実現できる。

このように我々は、水資源の確保と持続可能な低排出社会の実現に向け、FO膜法の実用化に向けた研究開発を進めている。

RO膜法とFO膜法の原理比較(RO膜法は圧力駆動、FO膜法は浸透圧駆動)

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FO膜法による海水淡水化プロセスの模式図

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熱に応答して水と2相分離するDSの開発

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SDGsの目標
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