取り組み事例

ナシ属およびツバキ属植物の近縁野生種の探索と 保全に向けた多様性調査

2019/02/15/Fri

   
 
片山 寛則(大学院農学研究科附属食資源教育研究センター・准教授)

果樹や花木類は人類の歴史と共に古くから利用されてきた。これらは人間が野生植物から選び出して利用してきたものである。多くの果樹や花木類には近縁の野生種があるが気候変動、自然生態系のかく乱、破壊と分断などから急速に減少し消失の危機に面している。栽培植物だけでなく、近縁野生種やその生息環境を人類の資源と捉えて持続的に保護することは、遺伝的多様性の確保という観点からも重要である。

中国内モンゴルのヤマナシ谷での調査

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ナシ属植物の起源地は中国南西部とされており、近縁野生種は温帯地域に広く分布している。中国東北部および日本の東北地方にはナシの近縁野生種である秋子梨、イワテヤマナシが自生している。中国林業科学院、神戸大学、大阪市立大学との共同プロジェクトでこれらの自生地での生息状況や遺伝的多様性を調査して保護すべき単位を明らかにして、イワテヤマナシは環境省の絶滅危惧種として指定された。また生息域外保全として神戸大学や兵庫県篠山市にて系統保存しており、研究目的での遺伝資源としての評価や教育目的では農場実習やESD関連講義で活用している。

ベトナム南部の熱帯雨林でツバキの探索

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ツバキは日本でも馴染みの深い花木であるが、起源地は中国南部からベトナム北部とされていた。しかし近年、黄花ツバキ野生種の乱獲や自生地の破壊が重大な問題になっている。ベトナムの2大学、大阪市立大学、神戸大学との共同研究プロジェクトでベトナム全域にわたるツバキの近縁野生種の探索と保全に関する研究を行い、北部のみとされていた近縁野生種がベトナム南部にも自生していることが明らかになり新種も発見された。これらの保護のために生息状況や遺伝的多様性を調査し、保全するべき単位の決定を試みている。

海外からの学生へのESD教材としての野生ナシの収穫体験

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以上のように栽培植物の近縁野生種に注目した保全単位の決定や保護、遺伝資源としての利用にむけた評価の両立を目指している。

   
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