PROJECTS

循環型社会の構築に貢献する統合バイオリファイナリーシステムの開発

荻野 千秋  工学研究科 教授  Chiaki OGINO Professor

神戸大学発・バイオプロダクション

 神⼾⼤学は、2009年から⽂部科学省「先端融合領域イノベーション創出拠点形成」プログラムにおける10年間の継続課題「バイオプロダクション次世代農⼯連携拠点」に、14の協働機関の中核として取り組んだ。再⽣可能なバイオマスからバイオベース製品の実⽤化までを⼀貫して⾏うプロセスイノベーションを起こし、新しい価値を持つ物質を⽣み出すプロダクトイノベーションへと展開することを⽬的としたこのプロジェクトに、荻野教授は中⼼メンバーの⼀⼈として携わった。
 ここで⽬指したのは、⾷料と競合しないセルロース系バイオマスから多様な燃料や化学品を⾼効率に作り出す「バイオプロダクション技術」の確⽴。最終的には化学⼯場で⽯油から製造している製品群をバイオベース製品に⼤転換することで、⼤きなパラダイムシフトを⽬指し、21世紀型の発展「グリーン成⻑」に貢献しようというプロジェクトだ。この⼀環として、2016年度には神⼾⼤学科学技術イノベーション研究科が設⽴されている。

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農業残さを利用した統合バイオリファイナリー

 燃料や化学製品(プラスチックや繊維など)製造の原料を⽯油から再⽣可能な資源「バイオマス」へと転換する「バイオリファイナリー技術」は、持続可能な社会の構築に⼤きく貢献する技術として期待が寄せられており、神⼾⼤学が優位性と独⾃性を誇る研究分野だ。荻野教授が⽬指すのは、再⽣可能資源であるバイオマスを原料にバイオ燃料や合成樹脂などを製造する「統合バイオリファイナリー」システムの確⽴である。とりわけ、農業残さの有効利⽤とそのための前処理技術の開発に⼒を⼊れている。
 2013年からは、地球規模課題対応国際科学技術協⼒プログラム(SATREPS)に採択され、バイオマス⽣産量の多いインドネシアのバイオマス資源であるパームオイル搾油やサトウキビ搾汁の残さを原料として、このシステムの確⽴を⽬指した5年間の研究に現地研究者と共同で取り組んだ。従来は廃棄されてきたバイオマス資源を原料としたバイオ化学産業を興し、ゼロエミッションを通じた⽯油資源に依存しない社会を実現しようというものだ。
 農業残さの中でも、⾷品や化成品の原料として幅広い⽤途をもち、世界の植物油脂の中で最⼤の使⽤量をほこるパーム油。荻野教授はパーム油産業からの排⽔・廃油に着⽬し、環境負荷の⼤きいパーム油廃⽔(Oil Mill Effluent(POME))をバイオディーゼル燃料に、燃焼利⽤されることの多いパーム椰⼦の空果房のバイオエタノールに変換する技術開発に現在も取り組んでいる。POMEは、廃棄されるだけではなく、ラグーンで処理される際に炭酸ガスやメタンガスなどの温室効果ガスを⼤量に放散する。荻野教授の統合バイオリファイナリー技術は、ゼロエミッション社会の構築とカーボンニュートラルの推進にも⼤いに貢献する技術というわけだ。



POME(Palm Oil Mill Effuent)

諸外国とのかけはしとなるバイオ技術をめざし

 バイオ燃料の研究開発に取り組んできた荻野教授は、原料をどこから持ってくるかということがいつも気になっていると話す。統合バイオリファイナリーシステムの構築に向けて、インドネシアだけでなく、マレーシアやタイ、台湾など現地の地域社会と連携しながら研究開発に取り組んできた荻野教授は、現地にあるバイオマスを有効活⽤して、現地で持続可能な社会を作ることを⽇本側から技術⾯でサポートする研究に今後ますます⼒を⼊れていきたいと意気込む。荻野研究室には多くの留学⽣が集っているが、⺟国に戻って現地で活躍してくれる⼈材を⼀⼈でも多く輩出していきたいという。その際、神⼾⼤学の強みである政策研究、とりわけ国際政治などの分野の研究者と連携することで、より⼤きな貢献につながることが期待される。

多くの留学⽣が集う荻野研究室

多くの留学⽣が集う荻野研究室



令和5年度JST地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)に採択されました

 荻野千秋教授が代表をつとめるプロジェクト「フードエステート廃棄物の変換技術によるバイオ循環経済の樹立」が、令和5年度JST地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)に採択されました。

■研究課題名・研究代表者

<研究課題名>
フードエステート廃棄物の変換技術によるバイオ循環経済の樹立

<研究代表機関>
大学院工学研究科 応用化学専攻 教授 荻野 千秋

<研究参画機関>
島根県立大学、国立研究開発法人国際農林水産業研究センター

<主な相手国研究参画機関>
インドネシア国・国家立研究イノベーション革新庁、パジャジャラン大学、ランプン大学、バンドン工科大学

■概要

本研究は、インドネシア大規模農園「フードエステート」から排出される廃棄物(排水、固形残渣、油脂成分)を、微生物機能によってバイオ燃料・化学品へ変換し、有価物として再循環させます。そして、環境調和型バイオプロダクトションによる新規産業を創出することで、バイオ循環経済の樹立を目指す計画です。
その実現に向けて、以下4つのサブテーマを実施します。

(1)農業廃棄物画分からのバイオ燃料およびバイオ化学品の生産
(2)二次排水の水質浄化と付加価値製品の生産
(3)バイオ循環経済の環境・社会・経済インパクトの評価
(4)提案する新規技術の社会実装と実現可能性の検証

(1)(2)では、廃棄物からバイオ燃料とバイオ化学品等を製造し、(3)(4)では、社会科学的評価をもとに、新技術が社会実装されるための現実的なプロセスを整理します。これらにより、温室効果ガスを含めた環境汚染物質の発生を抑制し、バイオ由来素材による循環経済の確立を目指します。

神戸大学Research at Kobe



LINK

バイオ⽣産⼯学研究室HP