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ライフサイクルアセスメント(LCA)手法による環境評価

田畑 智博  人間発達環境学研究科 准教授  Tomohiro TABATA  Associate Professor

 ⽥畑准教授が取り組むのは、ライフサイクルアセスメント(LCA)⼿法を使った環境評価。ごみの研究を発端とし、その過程で再⽣可能エネルギーの導⼊によって社会全体でCO2をどれだけ削減できるかということを研究してきた。例えば⽊質バイオマスを対象にすれば、⼭から⽊を伐り燃料としてエネルギー源とすることで、重油など化⽯燃料の消費量をどれだけ減らせるかという観点からの研究だ。
 私たちが⾞や電化製品を買うときに、何を基準にするかというときに環境にやさしいということがあるとして、⾞であれば燃費がいいというのが分かりやすいが、LCAでは、⾞を運転するときはもちろんだが、⾞の製造や廃⾞の際に消費するエネルギーも含めた「ライフサイクル」で評価する。それを応⽤して、⼭で⽊を伐る、燃料をつくる、燃料を燃やす、というライフサイクルから、どれだけCO2が排出されているのかを推計するというものだ。
 LCAで考えると、再エネを使えば通常CO2が減るという結果が出る。化⽯燃料の消費量を減らすのだから当たり前と⾔えば当たり前だが、それだけではなく、再エネを導⼊することによって社会が幸せになれるかどうかをきちんと⾒なければならないと⽥畑准教授は強調する。具体的には、経済的に儲かるのかどうか、雇⽤がきちんと⽣み出せるのかどうか。環境と経済、社会の側⾯から再エネを導⼊することの重要性を捉えていかなければならない。カーボンニュートラルを実現するために産業が潰れたら意味がないのだ。
 太陽光パネルの設置についても、設置場所によっては環境に逆に悪影響を与えてしまうこともある。例えば⼭に設置する際に⽊を伐採することで炭素吸収源が失われること、⽣物多様性や景観に悪影響を与えること、保⽔⼒が低下するために災害リスクが向上することといった点からも⾒ていかなければならない。また、再エネ導⼊による経済や社会への影響だけではなく、地域住⺠にとって喜ばれるようなシステムを実現することが重要。地域の⽊質バイオマスを地産地消することで、地域への愛着を深めたり、地域の魅⼒を⾼めたりすることになるということも考えられる。
 環境問題の研究から出発したが、環境のことだけ研究していても、現実の社会に反映できないと⽥畑准教授は話す。最近はアンケートや合意形成に関係する研究に注⼒しているといい、合意形成はまさに社会実装の部分であり難しいところだ。社会実装していくためには、⾃治体の考え、経済性、地域住⺠の考えなど⼤きく関わってくる。地域の幸せを向上できる技術の適⽤、そして⺠主主義型のカーボンニュートラルのあり⽅を実現するために、LCAの考え⽅による合意形成の⼿法が重要になる。

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木質バイオマスのエネルギー利用

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