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国際海運における脱炭素対策 ―船底防汚塗装システムの構築へ

岡村 秀雄  内海域環境教育研究センター 教授  Hideo OKAMURA  Professor

国際海運の脱炭素化における船底防汚対策の重要性

 化学物資の⽣態系影響評価を専⾨とする岡村教授は、国際海運において⻑年課題となっている船底の防汚塗装システムが及ぼす⽔環境へのリスク評価を⾏っている。船底にフジツボや藻類等の⽣物が付着すると、船舶の燃費が約3割も低下するだけでなく、外来⽣物の越境移動にもつながることから、その対策が国際的な課題となっている。国際海運からのCO2排出量は世界全体の約2%とされているが、ロンドンに本部を置く国際海事機関(IMO)では、国際海運からのGHG排出を、2030年までに9.4億トン排出していた2008年⽐で40%、さらに2050年までに50%削減する⽬標を国際合意している。
 船底防汚の技術は、国際航路が開発されて以来の研究分野だ。世界でも主要な海運・造船国のひとつである⽇本では、現在約20種類の防汚剤を使⽤しているが、約30年前までは、⽇本の化学メーカーが開発した防汚剤が世界を席巻し市場を独占していた。その主要な成分は有機スズ化合物であったが、環境への甚⼤な影響が問題視され、⽇本は使⽤⾃粛することになった。
 IMOに設置されている海洋環境保護委員会(MEPC)は、GHGや船底塗装、船底への⽣物付着による⽣態系の破壊、バラスト⽔など、船が海洋で起こす環境汚染問題を総合的に管理する組織だ。MEPCで国際条約が採択されれば、従来⽤いられていた化学物質が使⽤できなくなる。2023年1⽉1⽇からは、⽇本で⽤いられてきた約20種類の防汚物質のうち新たに⼀つが使⽤できなくなった。科学技術の進展に相まって、規制も強化されているが、国際航路を⾛る外航船にとって防汚技術へのニーズは低下することはなく、より良い防汚物質の開発が進められている。

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船底防汚のメカニズムとその生態系影響評価

 防汚(⽣物付着防⽌)のしくみは⼤きく分けて2つだ。⼀つ⽬は最近の技術で、ファウル・リリースという。⽣物がいったんくっ付きそうになっても、船が動くと脱落するようなメカニズムだ。物的な影響によって、船底に滲ませていた油が浮き出てくることで⽣物の付着を防⽌する。もう⼀つは、防汚剤に含まれたバイオサイドという化学物質が船底から溶け出ることで⽣物の付着を防⽌するというメカニズムだ。前者の⽅法ではバイオサイドはほとんど使⽤しないが、後者によってバイオサイドが環境にもたらす影響が問題になる。
 岡村教授は、⼩型の海産⽣物を⽤いた⽣物試験法と、低濃度の物質を測定できる機器を⽤いた化学分析との両輪で、バイオサイドによる⽔環境へのリスクを分析評価している。こうした分析評価を⾏うことができるのは、⽇本では海上技術安全研究所に専⾨の部署があるほかは、⼤学研究者では若⼲名にすぎない。とりわけ、練習船海神丸や実習船おのころといった船舶を有する神⼾⼤学では、これらを活⽤し、海事科学研究科のある深江や、内海域環境教育研究センターのマリンサイトがある淡路島の沿岸海域で実習や研究ができるという強みが存分に⽣かせるはずだと岡村教授は強調する。



神戸大学発の船底防汚システム構築をめざして

 最も期待するのは、こうした神⼾⼤学が有するシーズと環境を活⽤し、新たな船底防汚システムが神⼾⼤学から⽣まれることだと岡村教授は話す。船底防汚システムの構築には、防汚剤開発のための化学合成ができればいいというだけではなく、⽣物評価を含め、環境で使⽤してよいかどうかも含めて、さまざまな技術が必要になる。全学でCN推進に取り組む意義はこうしたところにもあるだろう。
 また、船底防汚の技術は、船だけではなく発電所などでも応⽤可能なものであり、実際にニーズがあるという。臨海部に設置される発電所では、冷却のために海⽔を使⽤し、使⽤後には海に放流する。冷却⽔管への⽣物付着防⽌技術は、船底防汚技術に通じるものがあるのだ。こうした技術が神⼾⼤学発で⽣まれる⽇が現実となるよう、岡村教授は若い研究者の活躍に⼤きな期待を寄せている。



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海事環境管理研究室