取組事例

分離膜によるCO2排出削減と地球温暖化の抑制

  • 産業と技術革新の基盤をつくろう

神尾 英治(大学院工学研究科・准教授)
吉岡 朋久(科学技術イノベーション研究科・教授)
松山 秀人(大学院工学研究科・教授)

高速且つ高選択的なCO2透過膜を創製し、CO2分離回収技術の実現を目指す

産業革命以降、化石燃料の大量消費に伴い大気中に蓄積された二酸化炭素(CO2)は深刻な気温の上昇を引き起こし、既に地球平均気温は産業革命時に比べて約1℃上昇している。未だ大気中CO2濃度は増加し続けており、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書によると、2030年から2052年には平均気温は1.5℃の上昇に達すると予測されている。平均気温が1.5℃上昇すると、これまで以上に異常気象や海面上昇などが深刻化し、生態系や人間社会に極めて深刻な影響が出ることが強く懸念されている。平均気温の上昇を抑制するためには、CO2排出量の削減技術や大気中のCO2を選択的に分離・回収する技術の確立が急務である。本研究では、CO2を高速且つ選択的に透過するCO2選択透過膜を創製し、そのモジュール化およびCO2分離プロセスの開発を目指している。

CO2分離膜の材料にはイオン液体を含有するゲル状物質を用いる。イオン液体は分子構造の設計によりCO2の吸収性や粘度を制御可能であり、また、揮発しないため、CO2分離膜のための材料として大きな可能性を有している。一方、イオン液体を固体状の膜に成形するために、イオン液体中に高分子やシリカ粒子から形成されるダブルネットワーク構造を構築し、イオン液体を含有するゲル膜とする。その特殊なダブルネットワークはゲルの機械的強度を飛躍的に向上し、イオン液体含有量の増大や超薄膜化を可能とする。

高性能CO2選択透過膜の導入により、CO2発生源から排出されるCO2を分離、回収し、大気中CO2濃度の増大を抑制することが可能であり、火力発電所や化学プロセス、製鉄プロセスの持続可能性を向上させる。さらに、大気中からのCO2回収にも応用できれば、大気中CO2濃度の低減に貢献し、地球温暖化問題の主要因を克服できる。

CO2選択吸収性イオン液体
イオン液体含有ダブルネットワークゲル膜
イオン液体を含有するダブルネットワークゲル膜(DN AAIL-gel)のCO2選択透過性(CO2/N2 selectivity; 縦軸)とCO2透過係数(CO2 permeability; 横軸)の関係