取組事例

経済学部ESD演習

  • 海の豊かさを守ろう

石川 雅紀(大学院経済学研究科・名誉教授)
小島 理沙(大学院経済学研究科・特命講師)

2017年度 ESD演習Ⅰ「高知県柏島研修での学び」

柏島は、高知県の西の最端にあり一周約4㎞、現在の島民は400名程度という小さな島です。古くから漁業が盛んで、マグロや鯛などの養殖も行われています。栄養豊富な内湾水と貧栄養ですが暖かく透明な黒潮が交わることで、温帯と亜熱帯に暮らす生物が混生しており、釣りやダイビングスポットとしても有名です。何よりも新種や日本初記録種などを含めて千種以上の魚の存在が確認されており、確認数として日本最多です。イシサンゴ類や貝類の多様性も高く、学術的にも価値の高い海域としても知られています。

この柏島に惚れ込みたった一人で環境保全、地域活性に取り組む生物学者の神田優先生が代表をつとめる「NPO法人黒潮実感センター」があります。神田先生には毎年本学の「社会コミュニケーション入門」の講義もしていただいていますが、2017年夏に柏島をフィールドにした授業「ESD演習」を実施しました。学生は柏島の中を歩き回り、美しい海を体感し、島民と話し、島が抱える様々な課題を見つけ、それらの解決策を考えていくという授業プログラムです。

学生たちは、体験したことのないほどの大自然を実感し、その保全の重要さを深く感じながら、島民の生活や経済、人間関係を現実的に捉え考えていく作業を行いました。学生は、自然の豊かさと隣り合わせにある狭い地域での暮らしや人間関係の難しさの現実を目の当たりにしました。現実の課題に直面するという学びは、座学のみでは決して学べない活きた勉強となりました。柏島の演習を履修した学生たちは、授業が終わった後も、課題と向き合い、柏島を守るお手伝いができないかと考え、行動を続けました。具体的には、彼らがいきついたアイデアとなる「ゲストハウス」を柏島に建築するため、地元の地権者をまわり、協力を探り、場所を探し、そしてクラウドファンディングの立ち上げを考えるなど、現実に実践をしてみることまで行いました。残念ながら、実行するまでに計画は頓挫してしまいましたが、リーダーを務めていた学生が涙を流しながら悔しがっていた姿は教員として忘れることができません。海の保全も地域も、結局は人の問題だと、改めて見つめなおしています。